冠地情(イイトコサガシ代表)著 漫画・かなしろにゃんこ
発行 2019年全:206ページ 価格:1500円 「内容」 第1章 ワークショップってなんだろう 第2章 会話の準備運動 第3章 自己紹介のワークショップ 第4章 気持ちを見つめるワークショップ 第5章 会話を楽しむワークショップ 第6章 想像力を伸ばすワークショップ
コミュニケーションのトレーニングを企画する人に役立つ本
「発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる」というサブタイトルのとおり、発達障害の方に向けて作られた様々なアクティビティが全部で40種類収録されています。教育の現場などで大変売れている本です。漫画で書かれているのでとても読みやすく実践しやすそうな一冊です。
著者の冠地さん自身も ADHDとアスペルガー症候群の混合型と言われる発達障害の当事者とのこと。当事者会「イイトコサガシガシ」の代表として10年間に渡って全国で「イイトコサガシ」のワークショップを行ってきたことで知られています。
当事者会や特別支援学校などでワークショップを続けてきた結果感じた対話の場での練習の手応えがこの本を作成する動機付けになったということです。
冠地さんは長らく引きこもってきた人や、他人とのコミュニケーションがうまくいかず会話の場面を避けてきた人、コミュニケーションの失敗に傷ついて人と話すことが怖くなってしまった人などを対象にしたワークショップを行っています。そんな冠地さんが常に大切にしているのが「試しただけで大成功」という方針。
この本の目指すものとして「相手に合わせる経験を積む」「話の引き出しを増やす」「会話における反応力を鍛える」などいろいろなレベルのものが紹介されています。
例えばしりとり的や連想ゲームなど言葉遊び的なもの、また体の動きや、視点、呼吸、身振りなどについて漫画でわかりやすく解説されています。学校の教科で言えば国語の言葉遊びと、体育の準備体操を組み合わせたような感じと言えそうです。
冠地さんは、コミュニケーションが苦手な状態のまま、苦手意識のために「もう何にもチャレンジしたくない」と本人が諦めてしまう状態や、その状態を「発達障害なのだから仕方ないです」と放置する周囲の人の態度について苦言を呈しています。
苦手意識をそのまま放置すれば「退化硬直」と呼ばれる状態になると説明しています。「退化硬直」というのは冠地さんが作った言葉です。つまり「コミュニケーションが苦手」という現状に安住して、開き直ってしまうとその状態が固定化されるだけはなく、時には、退行してしまう危険性すらあると指摘しています。
ワークショップや講義の前のアイスブレイクのネタ帳にも
この本のハウツーはとても興味深い内容がも裏されています。同時に、私個人としてはなぜ一般の会話のキャッチボールがそこまで難しいのか?が気になりました。
それは精神医療で言うところのいわゆる「脳の障害」なのか、それとも生育歴などによる経験的なコミュニケーションのプロセスに置いて形成された特徴なのかという疑問を持ちました。
本はそういった原因論とは関係なく、具体的なノウハウだけに焦点を絞って書かれたハウツー本に徹しています。
また実際にコミュニケーションが苦手な方との対話では、コミュニケーションつまり取り方の齟齬による誤解がおき、相手の感情面に傷を残してしまい、誤解を解こうにも対話での修復が困難になる場合もあります。
このため対話をする時には一般の会話よりもかなり慎重にならなければいけない部分多く、エネルギー必要ですし困難が伴う場合も少なくないと私は経験的に感じています。
だからこそ冠地さんの提案するように、早期から様々なゲーム的な対話の練習の場を意図的に作り、コミュニケーションの場数とバリエーションを増やし、本番ではない安心できる場で練習を積むことの大切さを改めて意識しました。
漫画によって紹介されているワークショップは、コミュニケーションが苦手な方だけでなく、一般の方が初対面でワークショップをするときに緊張ほぐしをするためのゲームとしてどれも便利に使える内容です。
最初はコミュニケーションの訓練だと思っておそるおそる参加する人が、次第に言葉のやり取りや、伝えることの喜びや、誤作動も含めたやり取りを緊張することなく、「なんか話すこと、伝え会うって面白いなあ」と思えるようになると良いなあと思って読みました。
ワークショップのファシリテーターは手元に1冊持っているとアイスブレイクの時にアイディアがもらえそうです。